認知症になる前に考えたい。「家族信託」という選択肢

はじめに

「相続の準備をする前に、親が認知症になってしまった…」
「この状態で相続の対策なんてできるの?」

こんな悩みを抱えているご家族、実は少なくありません。認知症が進行すると、銀行口座が使えなくなったり、不動産の売却ができなくなるなど、財産の管理が難しくなってしまいます。結果として、相続の準備がうまく進まないことも。

そこで注目されているのが「家族信託」という仕組みです。

財産を家族に託し、将来に備える方法として、多くの方が取り入れはじめています。今回は家族信託の仕組みやメリット・注意点を、わかりやすくご紹介します。

家族信託とは?

家族信託は、親など財産の持ち主(委託者)が、自分の持つ不動産や預貯金などを信頼できる家族(受託者)に託して管理・処分してもらう仕組みのことです。


例えば、親が認知症になってしまい自分で管理できなくなった場合でも、あらかじめ委託者と受託者が信託契約を結んでおけば、子どもなど家族がその財産を管理・運用・処分できるようになります。

家族信託に登場する3つの役割:

  • 委託者(いたくしゃ):財産の持ち主(親など)
  • 受託者(じゅたくしゃ):財産の管理や処分を任される人(子どもなど)
  • 受益者(じゅえきしゃ):財産から生じる利益を受け取る人(家族信託では多くの場合、親が受益者となる)

実際には、
「委託者」と「受益者」が同じ人(=親)で、
「受託者」が子ども
というケースが多く、親が持つ財産を子どもが管理や処分をして、そこから得られる利益(例えば不動産の売却代金、家賃収入など)はそのまま親が受け取る、というイメージです。

なぜ今、家族信託が注目されているのか?

高齢化とともに認知症リスクが増加

日本では高齢化に伴い、認知症のリスクが高まっています。

厚生労働省の「令和4年 介護保険事業状況報告」によると、75歳以上になると要介護認定者の割合が9割弱にまで達します。認知症を発症した場合、銀行口座が凍結されてしまったり、不動産の売却や名義変更ができなくなることも。


世田谷区を見ても、高齢化率(65歳以上の方の割合)は2023年時点で26%と都内平均よりやや高めです。

独居の高齢者も多いため、認知症による財産管理の問題を抱えるリスクは決して小さくありません。

相続トラブルを未然に防ぐ

認知症になると、自分の意思で財産の管理をするのが難しくなります。家族信託であらかじめ財産の託し方を決めておけば、子どもがスムーズに管理を引き継ぐことが可能に。

「家族に迷惑をかけたくない」「争いのない相続にしたい」そんな想いから、家族信託を選ぶ方が増えています。

家族信託のメリット

遺産分割のトラブルを回避

「財産を使い込んでいるのではないか?」」信託契約で財産の承継先を決めておけば、その財産については相続発生後の話し合い(遺産分割協議)が不要に。
遺言書がない場合には、相続人全員が話し合って「誰が何を相続するか」を決める必要がありますが、認知症などで話し合い自体が難しい場合、協議がまとまらず財産が“凍結”してしまうことも。

家族信託は、そういったリスクを減らす手段の一つです。つまり、家族信託には遺言と似たような機能もあります。

成年後見制度より自由度が高い

認知症の方の財産管理を支援する方法として「成年後見制度」もありますが、

  • 親族以外の第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が後見人に選ばれる可能性がある
  • 財産の処分や運用に制限がかかる場合がある

といった理由で、使いづらい面を感じる方もいます。

家族信託であれば、第三者ではなく子どもに財産管理を任せることが可能ですし、成年後見制度よりも自由に管理・運用ができるため、より柔軟に対応できるというメリットがあります。

複数世代への承継が可能

家族信託の契約書を作成する際に、「次にその財産を受け取る人(承継者)」を定めることも可能です。

例えば、「親(委託者・受益者)が亡くなったら長男へ、長男が亡くなったあとは長男の子どもへ」というように、第二・第三の後継者を指定しておくこともできます。

これは遺言と似た効果を持ちますが、複数世代にわたって承継先を決められる点が、遺言にはない家族信託ならではの特徴といえます。

家族信託の注意点

家族間のトラブルに発展するリスクも

受託者(子ども)が大きな権限を持つため、他の兄弟姉妹との間で「財産を使い込んでいるのではないか?」と不信感を招くことも。

事前に「家族会議」などで話し合いの場を設けることが重要です。

節税効果は限定的

家族信託によって信託の財産とした不動産などの名義が受託者に変わることになりますが、受益権(財産を受け取る権利)は親に残ります。
そのため、家族信託をしていたとしても、相続が発生したときには通常のどおり相続税とがかかります。
あくまで「財産管理の仕組みづくり」という位置づけであり、直接的な節税対策にはならない点は知っておきましょう。

「家族信託」という選択肢を、今こそ検討してみませんか?

家族信託は、親の意思がはっきりしているうちに始めることで、大切な財産を守り、家族の負担や将来のトラブルを防ぐことができます。
ただし、すべてのケースにとって有効とは限りません。家族構成や財産内容に応じた検討が必要です。

相続や家族信託のことでお悩みの方は、ぜひ一度「相続の仲人・YORISOU」へご相談ください。世田谷区で多数の相談実績がある私たちが、ご家族にとって最適な方法を一緒に考えます。

監修者
代表 元木 翼
司法書士法人・行政書士法人ミラシア
メッセージ:お客様とご家族の幸せな未来のために、オーダーメイドのプランをご提案します。
趣味:サッカー、フットサル、ゴルフ

相続に関する
お問い合わせは
「相続の仲人・YORISOU」
まで

あなたの相続について
些細なお悩みからでもご相談ください

電話から相談する

0120-998-225

受付時間 平日 9:30〜18:00

※「相続の仲人・YORISOU」では士業の紹介によるインセンティブはもらっていません。