成年後見制度とは?〜認知症の母を支えたある家族の事例から学ぶ〜

高齢化が進む現代社会において、「親が認知症になったらどうしよう」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。相続の仲人・ YORISOU ではそんな不安に寄り添って、事前にあなたの不安を少なくできれば良いな、と思っております。
今回は、成年後見制度の概要とともに、実際に制度を利用して高齢の親を支えた家族の事例を通じて、その必要性やポイントについて解説しますので一緒に見てみましょう。
目次
成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方(認知症、知的障害、精神障害など)に対して、家庭裁判所が選任した後見人が法律面や財産面でサポートを行う制度です。
例えば、本人に代わって預貯金の管理や契約手続き、また必要があれば不動産の売買などを行うことが可能になります。
この制度は、以下の3つの類型に分かれています。
- 後見(判断能力を欠く状況にある人)
- 保佐(判断能力が著しく不十分な人)
- 補助(判断能力が一部不十分な人)
家庭裁判所が本人の状態に応じて、適切な類型と支援方法を決定します。
【事例紹介】認知症の母と二人三脚の生活を支えた長男

ここで、実際に成年後見制度を利用したご家族の事例をご紹介します。
登場人物:
・母(82歳)…軽度の認知症を発症し、日常生活の記憶に混乱が見られるように。
・長男(55歳)…実家近くに住み、母の生活をサポート。
・妹(52歳)…遠方に在住、母の介護には直接関われないが協力的。
きっかけは「通帳が見当たらない」

ある日、母親が「通帳がない」「お金を盗まれた」と繰り返し話すようになりました。心配した長男が家中を確認しました。ところが家の中からは通帳が見つからず、銀行で調べてもらうと、残高が減っていることが発覚。
「詐欺か?」「母がどこかでお金を下ろしたのか?」
不安になった長男は、信頼出来そうな弁護士に相談。そこで「成年後見制度」の存在を知りました。
家庭裁判所への申立て
母親の認知症は医師の診断書で確認されました。そして「本人が契約や財産管理をするのは困難」と判断されました。
長男は家庭裁判所に後見人選任の申立てを行い、数か月後、正式に「成年後見人」として認められました。
これにより、母の通帳は長男が管理し、介護施設との契約や医療費の支払いもスムーズに行えるようになりました。
自分の親が認知症になる。「まさか」という気持ちのが大きいですよね。信じたくない気持ちもあってとても辛いと思います。親族が近くにいれば頼ることも出来ますが、それぞれの生活もあって気も使います。
そんな時には私たちに少し話を聞かせてください。
妹との信頼関係の維持
妹は「お兄ちゃんに全部任せて大丈夫なの?」という懸念を持っていましたが、成年後見制度では家庭裁判所への定期的な報告が義務づけられており、使途の透明性が担保されます。
妹にも通帳のコピーや支出明細を定期的に共有することで、家族間の信頼も保たれました。関係性が悪くならなくて良かったですね。
成年後見制度を利用するメリット
この家族のように、成年後見制度を活用することで次のようなメリットがあります。
- 詐欺被害や不適切な契約のリスクを防げる
- 家族による財産管理の正当性が担保される
- 介護施設や病院との契約手続きがスムーズに行える
- 家庭裁判所の監督があるためトラブルが起きにくい
一方で、家庭裁判所への申立てや報告の義務、場合によっては弁護士や司法書士に依頼する費用がかかるなどのデメリットもあります。
利用する際の注意点
成年後見制度は万能ではありません。特に以下の点には注意が必要です。
- 申立て後、審判が確定するまでには数ヶ月かかる。
緊急時には間に合わない可能性もあります。 - 原則として一度始まると途中でやめることは困難です。
後見人の選任は、本人の判断能力が回復しない限り続きます。 - 報酬が必要なケースもある。
専門職(弁護士・司法書士)が後見人になる場合、報酬の支払いが発生します。 - 本人の意思が尊重されることが大前提です。
制度を使うことで、逆に本人の意思が置き去りにされないよう、配慮が求められます。
まとめ:備えあれば憂いなし
最後に、成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した方の生活と財産を守るための大切な制度です。
ですからいざという時に慌てないよう、元気なうちから家族で話し合いをしておくことがとても重要です。
また、本人の意思を尊重しながら、制度の利用を検討するためにも、早めに弁護士や司法書士に相談するのが安心です。
家族の絆と信頼関係を保ちながら、安心した老後を支える手段として、成年後見制度は大きな力になります。
あなたの家族、あなた自身、今から少しずつ「もしも」に備えた準備を始めてみませんか?
そのお手伝いを私たち 相続の仲人・ YORISOU にさせていただけませんか?あなたの不安を少し軽く、いつかの役に立てるはずだと思っています。

- 監修者
- 司法書士 石井 博晶
- BIS司法書士事務所
- メッセージ:「相続による争いをなくし、家族がずっと仲よくできるお手伝いをすること」がモットーです。
趣味:描画、映画鑑賞